器の大きさは視野の広さかもしれない
ひっさしぶりに吐いた。
むちゃくちゃになってしまいたいという願望から、不肖数え年で21になるが、酒に初めて手を出してしまい、そして日がな一日呑むようになった。
数週間ほど前の事である。すぐにめっぽう弱い体質と判明した。しかし安く簡単なので気に入ってしまったのだ。
そういう訳で、最初はビビっていたのに1週間も経つと、調子に乗り、普段ODする咳止め薬と一緒に飲んで、吐いた。
ゲロにもスーパー賢者タイムのようなものがあるのかもしれない。スッキリはしたがもう動けない。テンションだだ下がり。
疾患があるにせよ、こんなごみくず生活が良い訳がない。ウウウ...。
どんな時でも余裕を持って優雅たれ
と家訓を垂れたのはFate/Zeroの遠坂時臣であり、痺れるセリフである。忙しない人々が噛みしめたい至言だ。
さて嘔吐のことだが、僕はそんなに経験がない。というか普通はそうなのではないか。
経験は少なくても、いよいよ吐くぞ、という感覚はなぜか察知可能だ。
キュキュキュと口の中が突然すっぱい唾液だらけになる。あ......くるぞ...。
トイレへ駆け込み、ひざまずき、便座にしがみつく。
ふう...。盛大に吐いてしまい、少し外してしまったので流しても臭いが漂う。
慌てて掃除をするのだけれど、あのツンとした臭いはなかなか消えてくれない。
親しみのない僕は、それ特有のツンとした臭いにあらためて驚く。こんなものを体内にいつも仕込ませているのか、と。無駄に関心する。
思えば糞尿もそうだ。人体はなかなかすごい。
自らの体臭は自分では分からない。だが、ゲロや糞尿の体臭がする人は出会った試しがないから、多分僕もその心配はないと思う。
そんな心配よりも、汗臭さや加齢臭の類いが世の人を悩ませているだろう。しかしこれは人間の宿命だと思うのだ。
ゲロや糞尿の強烈に放たれる臭いを閉じ込める副作用だと考えれば、己の正体不明な体臭も行き交う人々の体臭もかわいく思えるのである。
余裕を持って優雅で生きるには、たとえ上記のような屁理屈であっても、怖めず臆せずドーーンと力強く構えることが肝要なんだと思う。